【浜口町】被爆遺構とローカルなお店を巡るまち歩き
公開日：2023/12/18最終更新日：2023/12/18
浦上・平和公園
思案橋や浜町アーケードといった長崎市中心部から少し離れた浜口町周辺は、ディープ&ローカルな長崎の空気感を味わえるエリア。夜の飲み屋街として親しまれていますが、近年は店主の個性が際立つオシャレなお店もどんどん増えてきました。平和公園や原爆資料館からも近く、山王神社の「一本足鳥居」や「被爆クスノキ」といった遺構が今も残ります。地元の空気感を感じながら、新たな長崎らしさを感じられるまち歩きをご紹介します。
原爆の被害から立ち上がる生命力
商店街を抜けた先、山王神社に向かう参道にあるのが、長崎の代表的な被爆遺構の一つである「一本柱鳥居」。原爆投下による強烈な爆風で神社の社殿は破壊されましたが、外側２番目の鳥居（二の鳥居と呼ばれていました）は爆心地側の柱が倒れて、もう片方の柱だけ今も残っています。爆心地側の文字は熱線により溶かされて、読むことができません。原爆の威力の大きさが感じられます。
鳥居のすぐそばには、吹き飛ばされた左半分の柱が残されています。改めて近くで見ると、こんなに太くて大きな柱が破壊されたのだと驚きました。家々が立ち並ぶ一角に、こうした遺構が自然と残されている風景が印象的でした。
参道を登った先にある山王神社の境内入り口には、一本柱鳥居とともに平和や再生のシンボルとして知られる「被爆クスノキ」があります。爆心地から約800mという距離にある山王神社。樹齢400年以上のクスノキも原爆の爆風と熱線を受けて、枝葉は飛ばされ大きな亀裂が入りました。一時は枯死寸前となったそうですが、再び新芽を芽吹いて蘇りました。復興に向かう長崎市民を勇気付けたと思われます。
下から見上げると、その大きな幹と立派な枝葉の迫力が感じられます。東西40メートル、南北25メートルという大樹冠だそう。まるで包まれるようなスケール感です。近くには、木の治療を行った際に空洞の中から見つかった大きな石が置かれています。木の幹の内部には、無数の金属や瓦などが突き刺さっていたそう。いかに原爆の爆風が強烈だったのか、リアルに伝わってきます。
クスノキの奥の山道を進むと、山王神社の社殿があります。取材時は爽やかな風が流れ、とても心地良い空気に包まれていました。原爆の被害の大きさだけではなく、その後の復興に向かう力強い生命力を感じられる場所です。散歩がてら気軽に立ち寄れる雰囲気にも惹かれました。
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背伸びしないで過ごせるカフェで一息
参道を戻って少し歩いた場所にあるのが、2014年にオープンした「TOSAKA COFFEE」。店主の桑原恵吾さん自ら焙煎したコーヒー豆を販売しながら喫茶店として営業中です。
店内はカウンターとテーブル席の合わせて9席。落ち着いた雰囲気の居心地の良い空間で、ゆっくりと過ごすことができます。
焙煎したコーヒー豆は県内外のカフェなどに卸しているそう。種類は多種多様で、産地や豆ごとの味わいを見極めながら扱っています。どれを選ぼうか迷う場合は、気軽に相談してみましょう。
この日は水出しコーヒー「ダッチ（アイス）」450円を注文。すっきりとした飲み口ながら、コーヒーの香りがしっかりと感じられて、いつまでも飲み飽きないおいしさです。他にもカフェオレやエスプレッソ、フローズンドリンクなどもメニューに並んでいます。
そしてお店の名物メニューが、角切り食パンを使用したトーストです。人気メニューの「クロックマダム」550円は、フワフワの目玉焼きとハム、チーズの相性が抜群。贅沢な厚みと食べ応えで、幸せな気持ちになります。
開店当初から、メニュー構成や内装を大きく変えることなく営業している桑原さん。あくまで焙煎豆の卸売をメインとして、カフェはマイペースにと考えているそうで「できることではなく、できないことを考えてお店を始めました」とのこと。
もともと昔ながらの喫茶店が好きだったそうで「ゆっくり一人で読書したり、コーヒー一杯で気兼ねなく長居してほしい」という言葉に、なんだか安心します。時代に左右されず、こうして街に在り続けるお店がもっと増えてほしいし、大切にしていきたいと改めて実感しました。
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手土産やテイクアウトで立ち寄りたいお店①
通りごとにいろんなお店が並ぶ浜口町エリア。せっかくなら、お土産やおやつにぴったりのグルメも堪能しましょう。2020年にオープンした「菓子工房courir（クリール）」はプリンが有名なお店です。
もともと五島列島発の「鬼岳プリン」460円〜として県内外のイベントに出展して販売していましたが、ついに実店舗をオープン。通年購入できるとあって、味に惚れ込んだ常連客や、長崎を訪れる観光客にも親しまれています。
プリンは県内産の平飼い有精卵と牛乳、そしてマダガスカル産の最高級グレードのバニラビーンズを贅沢に使用したリッチな味わいで、満足度の高さにびっくり。プレゼントやお土産にオススメです。現在はプレーンとコーヒー、そのぎ抹茶がレギュラーメニューで、その他季節限定のプリンも登場します。取材時には長崎産の茂木びわが入った鮮やかなプリンがありました。
そしてプリンだけではなく、こちらも隠れた人気商品。「カスタードパイ」300円は注文を受けてからクリームを入れることで、パリパリ食感を演出します。カスタードは濃厚かつ滑らか。おやつ用にまとめて購入する方も多いそうです。
パティシエの専門学校を経て実家に戻り、新たにプリン作りを始めたオーナーの増山遼さん。「今後はプリン以外にも、ケーキや生菓子など新しいスイーツを開発したいです」とのこと。店舗がオープンした後もイベントへの出展を続けているので、ぜひ見かけた際は絶品プリンを手に取ってみましょう。
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手土産やテイクアウトで立ち寄りたいお店②
そして最後に足を運んだのが、ヨーロッパのパンと焼き菓子のお店「マルコポーロ」。実際にスイスなどで腕を磨いた店主が本場のパンを手作りしています。地元でも評判で、気になっていたパン屋さんです。
ハード系のパンが人気ですが、購入したのは「BREZEL(ブレッツェル)」160円。岩塩の塩味とライ麦の香りが抜群のおいしさで、しっかりとした生地は噛むごとにおいしさが広がります。毎日でも食べたくなる味わいで、わざわざ訪れたくなるお店でした。
まだまだ浜口町周辺には隠れたお店がたくさんあります。平和遺構を巡った後は、現在の長崎の街の営みを感じてみてはいかがでしょうか。歴史的な過去の出来事が、今の暮らしと繋がることで、より身近なものとなるはずです。
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この記事を書いた人
藤本編集局 藤本明宏
ライター
長崎県在住のライター・インタビュアーです。人とまっすぐ向き合い、心のこもった文章を書いていきたいと思います。また普段から、インタビューで長く、ゆっくりと話を深めることに意識を向けています。
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