さまざまな顔を持つ“北九州”の、まちの魅力をクローズアップ
公開日:2025/9/18最終更新日:2025/9/18北九州
北九州市は1963年(昭和38年)、五市が対等合併して誕生した九州初の政令指定都市です。そんな歴史的背景から、現在ある7区それぞれに多様な文化と魅力が息づいています。今回は「世界遺産のある街」「日本新三大夜景都市」、漫画や映画など「ポップカルチャーの街」という3つの表情をクローズアップ。どれも北九州市を語る上で欠かせない重要なキーワードです。
日本の近代化の歩みを証言する、世界文化遺産を訪ねて
明治時代、官営八幡製鐵所が操業を始めたことにより、急激な発展を遂げた北九州市八幡地区。現在も日本の近代化を支えた産業革命を伝える施設が数多く残されており、2015年には「官営八幡製鐵所」が世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録されました。
ただ、登録されている構成資産は非公開となっているため、北九州市では世界遺産をより深く知るための施設を整備しています。今回はそのうち2カ所をご紹介します。
官営八幡製鐵所 旧本事務所 眺望スペース
官営八幡製鐵所の関連施設は、製鉄所の構内にあることから一般公開されていませんが、構成資産のひとつである旧本事務所(1899年竣工)を眺望できるスペースが整備されています。
赤煉瓦で組まれた、2階建ての建物は遠くから見ても存在感があります。
眺望スペースには官営八幡製鐵所の歴史をはじめ、世界遺産に登録された4つの施設や関連施設の紹介、復原工事を終えた旧本事務所の内部を映像で紹介する、デジタルサイネージやVR体験ができます。
取材当日、熱い説明をしてくれた北九州市観光案内ボランティアの山下三男さん
しかも、ボランティアガイドさんが月曜以外、交代で毎日駐在。豊富な知識をもとに熱意を持って説明してくれるガイドさんは、観光客にとって非常にありがたい存在です。
スペースLABO ANNEX 世界遺産ビジターセンター
眺望スペースから徒歩で約10分の、スペースLABO ANNEX内「世界遺産ビジターセンター」。ここでは「明治日本の産業革命遺産―製鉄・製鋼、造船、石炭産業」全体を紹介した展示を行っています。※スペースL A B Oとは場所が異なるので要注意!
ガラス張りで明るい展示コーナーでは、官営八幡製鐵所の歴史や関連施設をパネルで紹介するほか、全国8県11市にまたがる構成資産を映像で紹介する「共通展示システム」があり、「明治日本の産業革命遺産」についてわかりやすく学ぶことができます。
日本の近代化を支えた北九州市の産業革命は、今回紹介した施設以外にも門司港レトロ地区(門司区)や河内貯水池(八幡東区)などでも触れることができます。興味を持たれた方は、足を伸ばしてみませんか?
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「日本新三大夜景都市」の煌びやかな実力を堪能しよう
2024年に開催された「夜景サミット」では、全国約6610名の夜景鑑定士の投票によりランキング1位で「日本新三大夜景都市」に認定された北九州市。なんと認定されるのは今回で3回目!
選ばれた理由は、市内に11の「日本夜景遺産」があり、「他都市と比べて夜景観光資源が群を抜いて豊富」という点が評価されたそう。
そこで、北九州の夜景といえばココ!という王道スポットや、産業都市・北九州市ならではの夜景など、3カ所を厳選してご紹介します。
国内屈指の夜景の名所・皿倉山。標高622mの山頂から見渡す光景は息をのむほど美しく、「100億ドルの夜景」と称されています。
山頂の展望台までは、ケーブルカーとスロープカーを乗り継いで向かいます。到着まで10分ほどですが、全面ガラス張りの車窓から次第に夜景が見え始めると、テンションは急上昇!スキーのジャンプ台とほぼ同じという、最大傾斜28度の急勾配を上り下りするドキドキ感もたまりません。
スタンドベンチのすぐ横には、ブランコなども!
ちなみに、皿倉山山頂は地上より6℃ほど涼しいので、夜景鑑賞の際は上着などの用意もお忘れなく!
夜になると幻想的なムードに包まれる門司港レトロエリア。余すところなく満喫するなら、「日本夜景遺産」に認定された「門司港レトロ展望室」からの眺望がおすすめです。著名な建築家・黒川紀章氏が設計した高層マンションの31階にあります。
画像は展望室から門司港駅方面を望む夜景ですが、関門橋や唐戸市場、下関の街並みなど、本州と九州の夜景を270度の大パノラマで楽しめます。特筆すべきは、夕日が関門海峡に沈む黄昏時。海、空、街並みの色がどんどん変わっていく光景は、記憶に残る美しさです。
全国屈指の工場地帯がある北九州市。海岸沿いにある稼働中の工場夜景は、まちの煌めきとは異なり、まるで生きているかのような躍動感のある灯りが特徴です。
そんなダイナミックな工場夜景を船上から楽しめる「工場夜景鑑賞コース」は、遠くから見る夜景とは異なる迫力が魅力。ナビゲーターの案内を聞きながら楽しむ約90分のクルーズは、特別な時間になること間違いなしです!
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ポップカルチャーの中枢、小倉駅周辺エリアで漫画三昧
官営八幡製鐵所の操業や門司港が国際貿易港として栄えたことから、全国各地からさまざまな人たちが集まり、多様な文化が交流した北九州市。戦後は貸本屋や映画館の数が全国でも多く、人々の感性や知性を駆り立てる芸術文化が育つ環境だったそうです。
北九州市は松本零士氏、わたせせいぞう氏、畑中純氏、陸奥A子氏、北条司氏など、漫画の歴史に名を残す漫画家が数多く誕生しています。そこで地元ゆかりの漫画家を中心に、幅広く漫画作品と関連資料を収集・保存し、漫画の特性や魅力を伝えていく研究、次世代に伝える企画展示などを 行っているのが、この「北九州市漫画ミュージアム」です。
最初に、エントランスにある等身大のハーロックフィギュアが出迎えてくれます(一緒に撮影O K!)
館内の常設展示は、「見る」「読む」「描く」という3つのテーマで構成。展示コーナーには、初代名誉館長でもある漫画家・松本零士氏の生い立ちや業績を紹介したコーナーや、漫画ができるまでの過程がわかるコーナー、漫画の歴史を戦後から現代まで紹介する「漫画タイムトンネル」があります。
漫画の制作過程がわかる「漫画の七不思議」
人気漫画の第一巻がズラリと並ぶ「漫画タイムトンネル」では、足を止めて思わず見入ってしまう人が続出です。(続きは閲覧ゾーンでちゃんと読めます)
漫画トンネルの先は、明るく開放的な「漫画コミック閲覧コーナー」が。約7万冊の漫画単行本が読み放題という幸せな場所です。
椅子やテーブル席のほか、寝転んで読める広々としたスペース(ゆたっとひろば)も人気
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ポップカルチャーの中枢、小倉駅周辺エリアで漫画三昧②
漫画スクールの様子
漫画を描いてみたいと思った方には、「漫画体験」「漫画スクール」などのイベントがおすすめ。「漫画体験」はタブレット作画ができ、100色以上のコピックなどプロの画材でイラストが描けます。「漫画スクール」では、プロの講師による指導で、漫画のコツをレクチャー。どちらも参加無料(常設展入館料は必要)。日程や時間は公式ホームページをご確認ください!
なんと言っても、J R小倉駅から徒歩2分という立地の良さも魅力の一つ。日本人にとっては誰もが馴染み深い「漫画」の世界に、どっぷりハマれるミュージアムです。
「銀河鉄道999」のキャラクター、鉄郎とメーテルの銅像。メーテルの隣に座ると、脳内に自然とゴダイゴのB G Mが流れます♪
「漫画の街」として知られる北九州市には、先述の「北九州市漫画ミュージアム」以外にも、漫画やアニメと気軽に触れ合える場所が多々あります。この銅像は、小倉駅の新幹線口から出てすぐの空中回廊に設置されています。
すぐ近くには「宇宙海賊キャプテンハーロック」の銅像も。凛々しい立ち姿は威厳たっぷり!どちらも記念撮影の人気スポットです。
商業施設「あるあるcity」からセントシティ方面(小倉駅南口)に抜ける「小倉駅東側公共連絡通路」は、知る人ぞ知る漫画体験スポットです。
明るいトンネル内には、北九州市ゆかりの漫画家・北条司氏が生んだキャラクターたちと、新日本三大夜景に選ばれた北九州市の夜景コラボの壁画や…
漫画のコマの中に入って撮影できるフォトスポットなども!
漫画ミュージアムが入っている商業施設「あるあるcity」も、アニメ・漫画・ゲーム・アイドルなどのポップカルチャーの発信地。駅周辺に集まっているので、移動のしやすさも魅力です♪
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多くの名シーンを彩った「映画の街」でロケ地巡り
都市と自然が近く、歴史的建造物も数多く残っている北九州市は、「映画の街」としても知られています。爆破や道路封鎖など大規模な撮影も、北九州市や企業などの全面協力で実現させており、映画関係者からは「北九州は不可能を可能にするロケ地」として名を馳せているそうです。2025年度時点で映画、ドラマ、CM等、制作協力に関わっているのは、なんと計700作品以上!北九州市のロケ地としてのポテンシャルの高さが伝わります。
「映画の街・北九州」を感じるために、まず訪れてほしい場所をご紹介します。
「KFC BASE」がある北九州市役所
「映画の街」を語るとき、外せないのが非営利組織「北九州フィルムコミッション」(K F C)の存在です。映画やT Vドラマなどの撮影を全面的にサポートする組織で、発足はなんと1989年!国内初のフィルムコミッション組織として誕生して以来、数々の撮影に協力しながら、北九州市のイメージアップ向上、街の魅力発信に貢献し続けています。
そんなK F Cの情報発信拠点「KFC BASE」が、北九州市役所の1階にあります。
これまで、K F Cが多くの市民やエキストラ、ボランティア、企業など官民連携で協力しながら築き上げてきた「映画の街」としての歴史、ロケ地支援で携わった作品などがわかりやすく紹介されています。
パネルを見ると、これまで百貨店、空港、競馬場などさまざまな場所で大規模なロケをおこなってきたことがわかります。
映画「MOZU」で主演を務めた西島秀俊さん、羽住英一郎監督の手形モニュメント、「相棒-劇場版Ⅳ-」の主演を務めた水谷豊さん、反町隆史さんの手形モニュメントなどもありましたよ!
KFC BASEではロケ地ガイドも配布中です。まずはここで情報収集をして、ガイド片手にロケ地巡りへ繰り出しましょう!
多くの名シーンを彩った「映画の街」でロケ地巡り②
先述の「KFC BASE」の目の前、勝山公園内にある「北九州市立中央図書館」も有名なロケ地のひとつです。その作品は、2013年公開の映画「図書館戦争」と、2015年公開の続編「図書館戦争 THE LAST MISSION」。良書を守るために戦う自衛組織「図書隊」の岡田准一さんや榮倉奈々さんが出演しています。
映画の公開後は多くのファンが聖地巡礼で訪れるようになったそう。館内にはロケに関する常設の展示コーナーが設置され、図書館特製の “撮影マップ”も手に入れることができます。
マップは1階の事務室で配布中。館内のどこで撮影されたのかが詳細に載っているので、作品を見た人なら「ここがあのシーンか!」と感慨もひとしおです。
なお、館内は撮影禁止ですが、事務室で許可証をもらうと撮影可能に。名前を記入するだけなので、手続きは簡単です。
館内に常設展示されている、図書館戦争の紹介コーナー。
今回S T L O C A Lで紹介している門司港レトロや北九州市立美術館、旦過市場、小倉城などの市内全域で、さまざまな作品のロケが行われています。聖地巡礼は北九州の魅力に触れる旅でもあります。ぜひ「映画の街・北九州」を楽しんでください。
この記事で紹介したスポット
この記事を書いた人

谷口 淑子
編集者・ライター
ある年齢以上の人なら知っている、かつて存在した北九州のタウン誌で編集長をしていた人。退社後はフリーで取材、執筆、編集を生業としていますが、一番得意なのはディレクションです。北九州ライターズネットワーク所属。
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