世界遺産巡礼の旅1:布教の中心地として栄えた長崎を偲び、二十六聖人ゆかりの浦上街道へ
2021/12/21 公開
浦上・平和公園
秀吉や家康がキリスト教の禁教政策をとるようになる以前、長崎は数多くのカトリック信者を抱えるようになり、繁栄の途上にありました。日本におけるキリスト教布教の中心地として「小ローマ」との呼び声も挙がったほどです。
長崎あるいは九州に限らず、国内のその他の地域でも進展していた布教活動。危機感を抱いた秀吉は京都・大坂の信者らを捕らえ、はるばる長崎まで徒歩で赴かせたのち西坂の丘で磔(はりつけ)の刑に処しました。
この「日本二十六聖人殉教地」である西坂に到達するまでの道のりの、最後の部分にあたる浦上街道は、長崎さらには国内のキリスト教受容の歴史を語る上で欠かせない、象徴的な道といえます。
さあ、二十六聖人ゆかりの浦上街道へ。県庁舎跡地~平和公園までの5kmの巡礼路を辿ります。
県庁舎跡地/岬の教会跡
長崎が開港してまもない1571年、何もなかった岬の台地に6つの町がつくられ、その岬の突端に、ポルトガル人および日本の信者のための小聖堂が設けられました。通称「岬の教会」と呼ばれたそのお堂がかつてここにあったことを、旧長崎県庁の玄関横にてこのモニュメントが伝えています。
岬の教会は、当時の国内におけるキリスト教布教の拠点。しかるにのち、厳しい禁教令が出された1614年には取り壊されるという憂き目に遭いました。代わって長崎奉行所(西役所)や海軍伝習所、医学伝習所が置かれた時代を経て、明治から2018年までは長崎県庁舎が4代にわたり建てられていました。
大昔から重要な施設ばかりが相次ぎ存在していたのがココなのです。
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長崎歴史文化博物館/山のサンタ・マリア教会跡
サントドミンゴ教会跡資料館(桜町小学校内)を過ぎると見えてくる、この立派な外観。かつてここにあった長崎奉行所(立山役所)の姿を復元した長崎歴史文化博物館です。
常設展示のテーマを「海外交流史」に据えているあたりがまさに長崎らしく、異文化の風が吹き続けたこのまちのあゆみを総合的に見てまわることができます。
そして実は、奉行所が存在するさらにそれ以前には教会があったのです。「山のサンタ・マリア教会」という名のそれは、当初は小さな聖堂に過ぎなかったものの、ポルトガルとの貿易で新たに町が形成・発展していくに伴い、その規模を大きくしていきました。ここもまた1614年の禁教令で破壊され、今ではその名を刻んだ石碑がみられるのみです。
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西坂公園/日本二十六聖人殉教地
筑後通りを経て辿り着く西坂公園は、殉教者追悼の地。京都・大坂のカトリック信者ら26名が(日本人20名のほか、スペイン人やポルトガル人ほか外国人宣教師も)遠く長崎まで歩かされたのちにこの丘で処刑、最年少でなんと12歳の少年も含まれていました。
時の為政者・豊富秀吉が処刑地に長崎を選んだのは、ポルトガルとの貿易の活発化に伴い増えていったキリシタンおよび宣教師への見せしめのためだったと言われています。到着した先で処刑されることを承知でなお、ひと月もの期間をかけ長大な距離を歩き続けた彼らの心境とは。想像するに余るものがあります。
写真提供:(一社)長崎県観光連盟
後年、1862年になって彼ら26人はローマ教皇ピウス9世により列聖を受け、「聖人」となっています。
なお、この後方にはキリシタン関連の資料や美術品が展示された「日本二十六聖人記念館」も。かのフランシスコ・ザビエルの書簡も見ることができます。
次に向かう平和公園へは、浦上街道を北上するかたちで向かいます。途中、わずかに脇道にそれて浦上教会に立ち寄るのもおすすめです。とても趣があります。
写真提供:(一社)長崎県観光連盟
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平和公園
言わずと知れた平和公園。広大な園内には原爆資料館、落下中心地を示す標柱のモニュメント、被爆当時の地層、そして平和祈念像などのスポットが。原爆を後世に伝え、平和を希求する精神に根ざしたものとなっています。
資料館の、被爆時のまちが再現されている一画では、浦上天主堂の聖堂の残骸の様子も。原寸大にて再現されており、その凄惨さがよりリアルに伝わってくるでしょう。
展望スペースを望めば、向こう側には色鮮やかな現在の浦上天主堂。平和を享受することへのありがたみの念も、グッと増してきます。
*写真掲載については長崎大司教区の許可をいただいています。
※情報は取材当時のものです。詳細は公式サイトなどでも事前確認することをおすすめします。
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この記事を書いた人
STLOCAL編集部
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