平戸市ってどんなところ? 東と西の文化の交差点、平戸で異体験
2024/10/30 公開
平戸
日本の一番西は大陸から見ると一番手前の玄関口
(写真 ながさき旅ネット提供)
川内峠。30ヘクタールの草原で、春はヒラドツツジが咲きほこります。峠入口の川内町はかまぼこ店が何軒かあり、名物「すぼ巻」の食べ比べも一興。
16世紀~17世紀を中心に、日本で初めての貿易港として中国やポルトガル、オランダ、イギリスと交易していた平戸。海上交通全盛の時代には、日本列島の西の端は、外国からすればいわば玄関口そのものでした。当時、流れ込んでいた異国文化の残り香は、今も街並みや食などに感じられます。一方で平戸松浦藩の喫茶(茶道)など武家文化も育まれ、平戸城もあいまって、まさに西と東の文化が行きかう交差点なのです。
(写真 ながさき旅ネット提供)
MR松浦鉄道のたびら平戸口駅は、日本最西端の駅。この駅から少し下ると産直所の平戸瀬戸市場があります。1階は新鮮な魚介類を格安で販売、2階のレストランは海鮮丼が大人気で素通りはもったいないです。
平戸市は、長崎県の中でも北西部に位置しており、田平町と平戸島を中心に生月島(いきつきじま)、度島(たくしま)、的山大島などのいくつかの島で構成されています。田平町と平戸島の間には赤い吊橋の平戸大橋、その先の生月島の間には青いトラス橋の生月大橋が架かり本土と結ばれています。
田平公園から観た夕暮れの平戸大橋(写真 ながさき旅ネット提供)
福岡や佐世保などからのアクセスもよく、海と島のダイナミックな景観や“最果て感”も堪能できるドライブエリアとしても人気で、年間約160万人が訪れます。
平戸島の先にある生月島のサンセットウェイ(写真 平戸観光協会提供)
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(写真 ながさき旅ネット提供)
「寺院と教会が見える風景」これが場所名。このまんまの看板があちこちに出ているので、迷わず行くことができます。
東西の文化の融合を1枚の写真に落とし込むとしたら? そんな理想的なアングルが撮れるのが中心部からほど近い「寺院と教会の見える風景」。正宗寺・光明寺・瑞雲寺の瓦屋根や石塀の向こうには、聖フランシスコ・ザビエル記念教会の尖塔と十字架。観光ポスターでおなじみの平戸を代表する風景です。
(写真 ながさき旅ネット提供)
崎方公園にある三浦按針の墓。ちなみに、木引田町のカスドースの老舗和菓子店「平戸蔦屋」は三浦按針の居宅跡とも言われています。
また、世界的に人気の戦国ドラマ「SHOGUN将軍」の主人公の一人、三浦按針(英国人ウィリアム・アダムス)のお墓がこの平戸にあることも、見逃せません。按針は徳川家康の外交顧問として活躍したのち、平戸を拠点に朱印貿易を行い、この地で生涯を終えました。崎方公園にある按針の墓のそばには、キリスト教布教で3度平戸入りしたフランシスコ・ザビエルの記念碑もあります。こんなVIPが普通に出入りしていた平戸、おそるべし!
千里ケ浜にある鄭成功の像。台湾の台南や中国の泉州にも同様の大きな像があります。
もう一人、中華圏で絶大な人気を誇る武人、鄭成功も忘れるべからず。台湾をオランダ勢から奪還した鄭成功はアジアの英雄となり、近松門左衛門の浄瑠璃「国姓爺合戦」のモデルにもなりました。実はこの人、平戸を拠点としていた中国人貿易商、鄭芝龍と、平戸の日本人女性田川マツとの間に生まれました。鄭成功が生まれた場所とされる児誕石は今も川内千里ケ浜にあり、近くには7歳まで暮らしていた生家が再現されて鄭成功記念館となっています。地元では毎年、7月に鄭成功まつりも行われています。
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(写真 ながさき旅ネット提供)
1987年に復元された平戸オランダ商館。中には大航海時代の貿易の様子がわかる展示がされています。
平戸は13世紀半ばから倭寇「松浦党」がおり、元寇の戦いでも大活躍しました。この松浦党が遣明船の警備も任されていたことで中国大陸からの貿易商も多くの拠点を置きました。そのうちの一人王直がポルトガル船を招いたことから、16世紀半ばに対ポルトガルの南蛮貿易が栄え、その後は入れ替わるようにオランダ、イギリスと交易。約100年の間、海外貿易の拠点となったのです。相対したのが平戸松浦藩で、歴代藩主は町づくりにオランダの工法を取り入れ、今もアーチが美しい幸橋や、オランダ塀が残っています。1987年に復元されたオランダ商館や松浦史料博物館に行けば、当時の交易の様子などを知ることができます。
(写真 ながさき旅ネット提供)
松浦史料博物館。松浦藩の貴重資料の展示他、武家茶道が体験できる茶室閑雲亭もあり。
一方、宣教師が残していったキリスト教も、400年の禁教の時代を経て潜伏キリシタンが脈々と受け継ぎ、その信仰の継承は2018年にユネスコ世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録されました。この構成資産の一つが平戸の聖地と集落「春日集落と安満」と「中江ノ島」。
(写真 ながさき旅ネット提供)
世界遺産の構成資産の一つ、「春日集落と安満岳」には、古民家をリノベーションした春日集落の案内所「かたりな」があります。
(写真 ながさき旅ネット提供)
世界遺産の構成資産の一つ、「中江ノ島」は岩から出る清水を聖水として採取する「お水とり」をする聖地。平戸島と生月島の間の沖合にあり、一般の立ち入り不可ですが生月大橋手前の漁港から遠望できます。
平戸市生月町博物館「島の館」は、くじら漁とかくれキリシタンが2大テーマ。写真はかくれキリシタンの信仰を守る家を再現した展示の様子。
かくれキリシタンの信仰の歴史を学ぶなら生月島の入口にある平戸市生月町博物館「島の館」。貴重な資料が分かりやすく展示されています。
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車のCMでもおなじみの生月サンセットウェイ
(写真 平戸観光協会提供)
生月サンセットウェイ。CMに使われたBGMをセレクトしていけば、気分も上がりそう。
生月島まで足を延ばすなら、ぜひともひとっ走りしてほしいのが生月サンセットウェイ。生月大橋を渡り、島の西側に回り込むと、そこは草原と荒々しい断崖の世界。見渡す限りの最果て感が漂うのは電柱や人家がほとんどないから。ホンダFITやマツダMPVをはじめ、アウディ、三菱、TOYOTA、日産、各種タイヤメーカーなど、実に多くのコマーシャルのロケが行われています。夕暮れが美しい日は、バイカーなどの入込み客が多く、皆さん約1時間程度で一周して帰って行くのだとか。愛車の撮影を目的に生月入りするのも面白いかもしれません。撮影の際はくれぐれも、他の車にお気を付けて。
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車で行きやすく、鉄道マニアの心もくすぐる平戸
【平戸へのアクセスについて】
平戸は、福岡からも佐世保(長崎)からも行きやすいエリアです。公共交通機関でもアプローチできます。ちなみに、平戸島内は南北に45kmと思った以上に大きい島。南北縦断するとなると車で1時間かかります。中心市街地は徒歩でも観光可能ですが、離れたところは車や路線バス、タクシーを利用しましょう。
福岡方面から
●唐津経由:玄界灘から伊万里湾と眺めが良いのが特徴。福岡都市高速―前原有料道路―唐津―伊万里―松浦-平戸大橋―平戸(約2時間)
●鳥栖JCT経由:安定の高速道路ルート。福岡都市高速―九州自動車道―鳥栖JCT-武雄JCT-西九州自動車道―佐々IC―県道227号線(山合いの道路)-国道204号線―平戸大橋-平戸(約2時間15分)
●JR:博多―佐世保(特急みどり号)―佐世保乗り換え(MR松浦鉄道)―たびら平戸口乗り換え(西肥バス)―平戸桟橋(約3時間半)
●高速バス:福岡―平戸(さつき観光 毎日2往復)(約2時間40分)
長崎方面から
●西海橋経由:長崎市街地―国道206号線―西海市大串IC-小迎バイパスー西海橋―国道202号線―江上交差点左折―国道205号線―県道204号線―平戸大橋―平戸(約2時間)
●武雄JCT経由:長崎自動車道―武雄JCT-西九州自動車道―佐々ICー県道227号線(山合いの道路)―国道204号線―平戸大橋へ。(約2時間)
●JR:長崎―佐世保(シーサイドライナー)―佐世保乗り換え(MR松浦鉄道)―たびら平戸口乗り換え(西肥バス)―平戸桟橋(約3時間)
●高速バス:長崎―佐世保(高速バス)―佐世保乗り換え(西肥バス)―平戸桟橋(約3時間)
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長崎文献社
出版社
長崎を知る、愉しむ。長崎の歴史と文化を深堀りしたブックレットシリーズ「長崎遊学」「旅する長崎学」でおなじみ地元出版社。既刊本から抽出したエッセンスを駆使して長崎の魅力を発信します。
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